転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


359 スキルって意識しないと身につかないんだって



「それじゃあ、熟成の説明に入るわよ」

 お母さんも納得してくれたって事で、僕はアマンダさんに熟成を覚えるためのお勉強を教えてもらう事になったんだ。

「うん! えっと、熟成って、さっきお父さんとお話してた時に言ってたやつだよね?」

「よく覚えていたわね。ええ、そうよ。この技術はね、本当は肉の熟成を進めるために生み出されたものだと言われているわ」

 おっきな動物のお肉ってね、アマンダさんが言うには獲ったばっかりだとすっごく硬いし、それにあんまりおいしくないんだって。

 だからお金持ちが食べるお肉は解体してからちょっとの間置いとくらしいんだけど、暑い季節だと腐っちゃうかもしれないでしょ?

 せっかく苦労して獲ったのに、そんな事になっちゃったらもったいないからって、この熟成ってスキルは生まれたんだってさ。

「え〜でも、僕の村だと、獲ってきたお肉を次の日には食べるよ?」

「ああそれは、魔物の肉だからよ。魔物はね、その肉に含まれている魔力のおかげで旨味が少なくてもおいしく食べられるからね」

 普通のお肉って、硬いのは1日たてばもう柔らかくなるらしいんだけど、味は中の成分が分解されないと美味しくならないそうなんだ。

 でも魔物のお肉って魔力が入ってるから、そのまんまでも十分おいしいでしょ?

 だからこの熟成ってのを誰もしてないんじゃないかなぁ? ってアマンダさんは言うんだ。

「だけどね、ルディーン君。魔物のお肉でも、熟成させた方がとってもおいしくなるのよ」

「ほんと?」

「ええ。これはね、食材を専門に解析する錬金術師さんたちが言っている事だから間違いないわ」  

 解析って、普通は魔力を注ぐものを見つけるために使うでしょ?

 でもね、この技術を使うと調べた物の中にどんな成分が入ってるのか解るから、食材に使うとそれがおいしくなってるかとか、悪くなってないかとかが解るんだって。

 アマンダさんが言ってる食材専門の錬金術師さんたちってのは、お料理や食材の事をいっぱい勉強してる、食べ物の解析に特化している人達なんだってさ。

「へぇ、そんな人たちがいるんだね」

「ええ。専属料理人を持っている貴族や金持ちの殆どは、同時にそういう錬金術師も雇ってるのよ。後、一部の高級なお店や宿屋に食材を下ろしている商会とかもね」

 このお菓子屋さんが仕入れてる商会もそう言う錬金術師さんを雇ってて、だからだからアマンダさんも安心して毎日お菓子を作る事ができるんだってさ。


 熟成のスキルがどんなのかってのを教えてもらったって事で、今度こそお勉強の時間だ。

 でもね、アマンダさんが言うには僕がこのスキルを覚えるのって、そんなに難しい事じゃないんだって。

「さっきパン生地を使って発酵を覚えた時、最後に自然発酵したものを見本にして二次発酵をさせたでしょ。実を言うと、この熟成と言う技術はあれとほとんど同じものなのよ」

 アマンダさんが発酵や醸造を覚えられなかったのは、魔力をうまく扱えなくて錬金術を使う事ができなかったかららしいんだ。

 でもこの二次発酵に使ってるのは純粋な料理人のスキルだから、アマンダさんにも使えるんだって。

「パンを膨らませるのとおんなじなの?」

「全く同じではないけど、おいしくなるように変質させるという点では同じね」

 アマンダさんはこの後、パン生地が膨らむ時とかお肉がおいしくなる時には素材の中で何が起こってるのかを詳しく教えてくれたんだ。

 でもすっごく難しい事だったから、正直僕にはよく解んなかった。

「そんなにいっぱい言われても、僕、解んないよ」

「ああ、確かに専門的な事を話しても解らないわよね、。ごめんなさい。私が言いたかったのはね、熟成はその素材の力を引き出す技術で、その効果はその技術を使われた素材によって違うという事なのよ」

 熟成って、料理人がその素材の一番おいしくなる状態を見つけて、それに近づけようとするスキルなんだって。

 だからおんなじスキルを使っても、別の素材だったらおんなじ効果が出るわけじゃないらしい。

「でもね、それは料理に使う材料だって同じでしょ? 作る物によって使い調味料もその量だって全然違う。でも一番おいしくなる素材の量はある一定の技術を持った料理人ならちゃんと解るわ。それと同じで、この熟成と言う技術もそれを使うだけの腕があって、なおかつ何か一つの素材でそれが成功しているのであれば身につけることができるはずよ」

「そっか。僕、さっきちゃんとパン生地を膨らませることができたもんね」

「ええ。それにあなたは発酵だけじゃなく、醸造も身につけることができたわ。それならば、この熟成も身につけることができるのに十分な腕を持っているはずよ」

 そう言えばさっき、お父さんとお話してる時も同じような事言ってたっけ。

 って事は僕、もう一応熟成のスキルが使えるって事なんだね。

「あれ? って事はもしかして……」

 僕は、慌ててもういっぺんステータスのスキルの欄を見てみたんだ。

「あっ、熟成が載ってる」

 そしたら何でか知らないけど、さっき見た時は載って無かった熟成がスキルんとこに発酵や醸造と並んで載ってたんだ。

 でも、なんで急に載ったんだろう?

「どうしたの? ルディーン君」

「あのね、今スキルんとこを見てみたら、熟成が載ってたんだ」

「えっ!?」

「でもね、不思議なんだよ。だってさっきは載ってなかったんだもん。でも、アマンダさんが言う通りパンを膨らませたのが熟成とおんなじスキルだったら、その時載らないとおかしいでしょ? でもさっき見た時は載ってなかったんだよね」

 アマンダさんが教えてくれた通りだったら、さっきスキルの欄を見た時に載ってないとおかしいでしょ?

 でもあの時は絶対載ってなかったんだよね。

 だからなんで今になって急に載ったんだろうって、僕は頭をこてんって倒したんだ。

「ああ、多分それはルディーン君が使えると認識したからじゃないかしら?」

 そしたらね、僕たちのお話を聞いてたルルモアさんがその理由を教えてくれたんだ。

「認識?」

「ええ。これは冒険者さんたちから聞いた話なんだけど、今までは何となくやっていた事を誰かに指摘されてそれを意識してやる様になると、何故かその瞬間から劇的にその技術が向上するって事があるらしいのよ」

 例えば獲物の痕跡を見つけるのが妙にうまかったり火打石での火おこしが妙にうまかったりする人が、そのやり方を見たほかの冒険者さんからどうやってるの? って聞かれたりするでしょ?

 その時どうやってるんだっけって考えてやってみると、今までよりももっとうまくやれるようになるんだって。

 ルルモアさんはね、僕がさっき、いつの間にか熟成がスキルの欄に載ってたって言ったのを聞いて、あれはその瞬間にスキルを身につけたんじゃないかって思ったらしいんだ。

「なるほど。もうすでに使える状態になっていても、それをその技術だと理解していなければ習得できないという事ね」

「ええ。ルディーン君さっき、熟成のスキルを知らずに使ったのよね? でもさっきやったパンの二次発酵が熟成だとアマンダさんに教えられたことで意識し、さらにその時の事を思い出すことでスキルになったんじゃないかしら」

 そっか。さっき醸造のスキルも、MPが減ったから使えたんだよね? って思った時にスキルの欄に載ったもん。

 これもおんなじで、さっき使ってたんだぁって思ったから熟成がスキルの欄に載ったんだね。


 いつの間にか熟成も習得してしまっていました。

 因みにスキルの欄に載る条件ですが、基本的にはルルモアさんが指摘したものであっています。

 ただそれはドラゴン&マジック・オンライン当時になかったスキルや魔法だけで、ゲーム由来のものは習得できるレベルになると自動的に追加されるため、ルディーン君自身が意識しなくてもいつの間にか載っています。

 なので実を言うと、ゲームの頃は演出でしか出てこなくて自分では使った事が無かった便利な生活魔法や一般スキルが、ルディーン君のステータス画面の中に日の目を見る事なく眠っていたりしますw


360へ

衝動のページへ戻る